質問よりっ!ピルについて詳しく話してみた#306

Voicy更新しましたっ!

今回はコメントで頂いたピルのお話

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低用量ピル・アフターモーニングピルとは

婦人科で低用量ピルを勧められたが、抵抗がある」というコメントをいただきました。

ピルは乳がんのリスクを高めるとか、生理に悪い影響が出るなど、婦人科の病のリスクを高める、というようなこともしばしば言われると思います。

今回はよく婦人科で出る「低用量ピル」や、アフターモーニングピルについて、詳しくお伝えしていきます。

低用量ピルは「女性ホルモンが入ったお薬」

まず、婦人科でよく処方される低用量ピルとは、ざっくり言うと「女性ホルモンが入っているお薬」です。

生理が重い、つらい時にこれを飲むとどうなるかというと、体が妊娠しているときと同じようなホルモンバランスになります。

体が妊娠してると思い込み、排卵をしないようにして、子宮内膜も分厚くしないようにする、働きがあります。

つまり、生理の周期をお薬の力で整えられることはもちろん、子宮内膜症の治療にもつながり、さらに排卵されないため避妊の効果も得られます。

また最近よく言われるPMSという、月経前に起きる様々な不調の改善もできます。
避妊に関してはほぼ100%に近いレベルで成功するのも、低用量ピルです。

女性ホルモンにお薬の力で直接働きかけるため、生理に関連した様々なことに対応できるのが大きなメリットです。

昔のピルは低用量ではなかった

今は低用量ピルと言われていますが、昔は単に「ピル」と呼ばれていたと思います。

これはなぜかというと、単純に低用量ピルの方が含まれている女性ホルモンの量が少ないためです。

一昔前のピルとは、今と比べると多分に女性ホルモンが含まれており、副作用が非常に多くありました。

現在も言われているような、ピルを飲むことでがんのリスクが高まる、太るというのは昔のことで、現在主流となっている低用量ピルであれば、そのリスクは大幅に激減しています。

昔のピルだと、乳がんのリスクはピルを飲まない人と比べて1.24倍あるとされ、今の低用量ピルはたとえ乳がんの家族歴がある人でも、特にピルによってリスクが高まることは無く、普通の人と同じレベルという報告が非常に多いです。

ただし、低用量ピルだからと言って完全に副作用が無いわけではありません。

女性ホルモンから血栓症のリスクが

低用量ピルは平たく言えば女性ホルモンをとることですが、この副作用で一番注意が必要なのが、血栓症です。

よくエコノミークラス症候群と言い、座って膝が曲がった状態のような、同じ姿勢で居続けると血の塊ができてしまい、それがハイに詰まってしまうと肺塞栓を起こします。
また、脳の血管に入って詰まってしまうと脳梗塞、心臓で起こると心筋梗塞と言った重大な病が発症します。

この血栓がなぜ女性ホルモンで生まれるかというと、女性ホルモンはもともと血を固まらせやすくする、という働きがあります。

こう聞くと、とんでもないリスクに思われそうですが、これが起こるのは2万人に一人程度で、さらにそれが必ず脳梗塞や心筋梗塞を起こすというわけではありません。

2万人に1人程度は、ピルによって血栓が出来てしまうことがある、ということです。

ただ、何か調子悪いなと思ったらエコーで調べるのもしてみてください。

血栓を作りやすい方と作りにくい方がいて、肥満気味の方やたばこを多く吸っている方、そして高齢の方はどうしても血栓症を起こしやすいタイプですので、特に注意してください。

実際、35歳以上で1日にたばこを15本以上吸う方は、低用量ピルは使えませんので、出来るだけ禁煙するのがおすすめです。

場合によっては、ピルそのものが合わないという事もありますが、ピルもいくつかの種類があります。副作用がつらい方も中にはいるので、その場合は婦人科のお医者さんと相談してみてください。

避妊にはアフターモーニングピルという選択も

最後に、ピルを避妊のために使う方もいると思いますが、最近「アフターモーニングピル」というものがあります。

これは72時間以内にアフターモーニングピルを飲むことで、99.9%避妊できるというものです。

通常、低用量ピルは事前に飲むことで避妊をするというものですが、これは失敗した後に飲むことで避妊ができるので、本当に緊急の場合の手段として有効です。

デメリットとしては、必ず病院に行かないといけないのと、体に大きな負担をかけることです。

今後、将来的にですがオンラインでの診療もできるようになるようですが、結局家に届くまでかなり時間がかかるはずなので、正直不安だと思います。その分費用も掛かるので、おそらく診察料込みで1万2000円から1万5000円前後はかかると思います。

また、アフターモーニングピルは体にかなり負担がかかる上、これを飲んだとしても本当に避妊できているか分かるのは、次の生理なのです。

生理が来るまでずっと不安で過ごさないといけないことを考えると、事前に低用量ピルを飲むなどで、しっかりと避妊をしておくのが一番確実と言えます。

ネットで販売されているピルは危険

最後に、たまにネットで低用量ピルやアフターモーニングピルが販売されていることがありますが、偽物が非常に多く、危険なので購入は避けてください。

お医者さんにかかるのが嫌という方が、ネットで探すということもありますが、ピルとして全く意味がないものも販売されているので、お困りであれば婦人科のお医者さんに診てもらうことを強くおすすめします。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属