梅雨場は食中毒に注意!#323

Voicy更新しましたっ!

今回は、梅雨の時期から気を付けたい食中毒のお話

健康情報を声で聞ける!

医療・健康ナビ なくすりーなはこちらから聞いてみて下さいね^^v

 

高温多湿になる「梅雨」の食中毒

食中毒というと、夏の一番暑い時とか、冬場のノロウイルス等、どちらかというと極端な季節の時に言われがちですが、意外と見落としがちなのが「梅雨」の時期の食中毒です。

今の時期から、意識して注意していきましょう。

 

34度~40度が最も菌が繁殖しやすくなる温度

梅雨は時期的に夏の入り口となるあたりですので、ある程度温度が高く、そして雨によって湿度が非常に高い、という季節です。いわゆる「高温多湿」の状態です。

高温多湿だと細菌が非常に増えやすい、と言われますが、具体的に一番好条件となる温度はだいたい34度~40度とされています。

この時期に気温が34度にまでなることはほぼ無いと思いますが、車の中のような、日光がずっと当たっているようなところに食品を置いておくと、温度が34度程まで上がることは充分あります。

また、冷蔵庫に入れずに部屋の中に置いておくと、その食品の温度は徐々に室温に近づいて行く上、食中毒の菌は34度以上にならずとも増えて行きますので、食中毒になるリスクは大きく高まります

もともと、食中毒の菌は0度を超えた時点で増え始めるもので、温度が高くなるにつれて増えて行く、という特徴があります。

ちなみに、繁殖がピークとなる40度を超えていくと、細菌にとって熱となり、活動能力が落ちていって死滅する、という風になります。

 

梅雨・夏は細菌による食中毒が

梅雨の食中毒は、細菌によるものがほとんどです。

有名なO-157、サルモネラ菌、カンピロバクターなどですが、これらに対して冬場はノロウイルスのような、ウイルスによる食中毒が多いです。

なぜかというと、ウイルスは低温で乾燥しているところで活発になる特徴があるためです。乾燥している時はウイルスにとって動きやすく、また人体も吸い込みやすくなってしまうため、簡単に体内に入り発症します。

夏にもウイルスは存在しますが、湿度と温度の高さによって活動が大幅に鈍り、なかなか体内に入らないので発症しにくいという特徴があります。

 

食中毒の症状

食中毒の症状は感染した菌によってある程度違いがありますが、まず初期症状は悪寒、発熱、腹痛など、いわば風邪のような症状と、下痢、吐き気が出ます。

嫌な寒気、38度ほどの熱が出る、それから水のような便、下痢がたくさん出るとか、吐き気と嘔吐があります。

また、例えばO-157では単なる下痢だけではなく血便も一緒に出るという特徴もあります。

このような症状が出たら食中毒を疑って良いですが、注意するべきなのが「直前に食べた食事が原因とは限らない」という点です。

たまに1週間前にとった食事に菌があって、それが原因で食中毒の症状が出ている、という事があります。

なので、直前とか前の日だけではなく、2つ前ぐらいまでの食事を覚えておいて、何か怪しいものあったかなと思うのが良いと思います。

 

食中毒の症状が出ても、市販の下痢止めは飲まない

もし食中毒の症状が出たら、食中毒かもと思ったら、まず下痢が出ると思いますが、その時に市販の下痢止めを飲むのはやめてください

なぜかというと、下痢によって菌を体外へと出すためです。

下痢が出るのは、鼻水を出して風邪のウイルスや花粉を外へ出すのと同じように、食中毒の菌を体外へと出そうとする働きによって起きているものです。

なので下痢止めを飲んで、便を体内に無理にとどまらせるということは、治りを遅らせることに直結してしまい、場合によってはもっと悪化させることになります。

お医者さんの指示で、下痢止めと抗菌薬を出して、抗菌薬によってやっつけるということはありますが、そうではない場合で、自分の判断で市販の下痢止めを飲むのはやめてください。

あともう一つ下痢に関連して大切なのが、水分補給です。体内の水分を使って便にするため、水分とミネラルが一気に失われてしまいます。

しかし、食中毒の症状は嘔吐もあるため、なかなか水分が受け付けられないこともあり、その場合は前回など熱中症の時に度々登場する「OS-1」を使うのがおすすめです。

15分に1回、ペットボトルのキャップ1杯ぐらいをこまめにとり続けます。

面倒ではありますが、普通のお水やスポーツドリンクが受け付けないという時には、活用してみてください。

ひとまず治るまでは、食事はとらなくても大丈夫なので、水分補給だけこまめにやるようにしましょう

万が一それも受け付けない場合は、点滴によって水分補給するため、すぐに病院に行ってください。

 

食中毒の予防は「菌をつけない・増やさない・殺菌する」

食中毒の予防は、菌をつけない、増やさない、殺菌するの3つに尽きます。

これは予防三原則ともいえるほど、重要なことです。

まず「菌をつけない」ことですが、人の手には黄色ブドウ球菌という菌があり、これは食中毒の原因菌となるもので、これが食品につくことで食中毒の菌が繁殖してしまう、ということになります。

これを防ぐためには、しっかりと洗うこと、そして分けておくこと、が大切です。

手を洗うのと同時に料理を載せるお皿、まな板や包丁など、食品に触れる調理器具をしっかりと洗う、そして食材は食材ごとに分けて保存しておくことで、余分な菌が付着するのを防ぐ、といった対策がおすすめです。

そして室温で放置せずにすぐに冷蔵庫に入れる、もしくは調理してしまって食べて、菌に増える時間を与えないようにしてください。

短時間でも室温で放置すると、菌はあっという間に増えてしまいますので、必ず素早く冷蔵庫に入れるなどで、菌が増えないようにしてください。夏場に特に注意して欲しいのが、頻繁に扉を開け閉めしてしまって冷蔵庫内があまり冷えない、ということがあります。

開けっ放しにしてるつもりは無くても、頻繁に開閉すると結果的に庫内の温度が高くなって、食中毒のリスクが高まるということがあるので、出来るだけ開け閉めせず、慎重に取り扱うことで食中毒の予防に役立ちます。

 

加熱して食べることが一番

最後の殺菌ですが、やはり一番予防になるのが「加熱して食べる」ことです。

この時期は特に、加熱して食べるものを食事のメインにすることがベストです。例えば次の日絶対体調を崩せない、万全にしておきたいといった時は、生ものを食べないのも一つの手です。

また調理器具の殺菌ももちろん重要で、熱湯をかけて消毒するなどをしてから使うのも、予防につながります。

こうした事に気を付けて、食中毒を防いでいきましょう。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属