下痢止めと整腸剤って何が違うの?#360

Voicy更新しましたっ!

今回はつらい胃腸のトラブルに使う「下痢止め」「整腸剤」についてのお話。

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市販薬で治る下痢

voicyでも度々お話していますが、腹痛、下痢、便秘といった胃腸のトラブルは、非常に様々な原因があり、一概には言えません。

まずは下痢の仕組みから、主に市販薬で治るタイプの腹痛や下痢についてお話ししていきます。

次回はさらに厄介な、ウイルスが関わってくるタイプについて詳しく触れるので、次回も併せて是非ご覧ください。

 

便に大量に水分が入った状態

そもそも「便の中の水分が多過ぎる状態のこと、となります。

便の水分は、そのうちの99%が大腸で再吸収され、便に水分はほとんど含まれないことになります。

お茶やお水のような飲み物はもちろんですが、例えば胃や腸から出た消化液も、大腸に行った時点で体に再吸収されていきます。

しかし、量が多過ぎるなどで再吸収されず、大量に水を含んだまま便が大腸にとどまり、下痢となって排出されるということです。

 

市販薬で対処できる下痢

市販の薬で治せるものとしては、まず「浸透圧性下痢」が挙げられます。

大腸で水分が吸収されない理由の一つに「水分の浸透圧が高いから」というものがあります。腸の中に出た水分で、浸透圧が高いものがあり、それが残ってしまって、便が柔らかくなっているという仕組みです。

浸透圧とは、簡単に言うと、味が濃くしょっぱいものを食べたときは、喉が渇いて水を飲みたくなると思います。それはその食べ物の浸透圧が高く、どうにか体内で薄めようとしている働きの現れです。

それと似ているような現象が、大腸で起きていると考えてください。

ジュースのような人工甘味料や、牛乳に含まれる乳糖によって起きることがあります。よくある牛乳を飲んでおなかを壊すのは、この浸透圧性下痢になります

もう一つ「蠕動運動性下痢」も、市販薬で治せる下痢の一つです。

食べ物が胃と消化管を通り、吸収して便へと変わるまで、腸は「蠕動(ぜんどう)運動」をすることで、食べ物を少しずつ動かしていきます。

何らかの原因でこのスピードが速まると、水分の吸収が追い付かず、吸収が不十分なまま、便となってとどまることがあります。

原因は主に刺激物とかストレスが挙げられます。

有名な「おなかの冷えによる下痢も、種類としては蠕動運動性下痢に入ります。

この二つであれば、市販の下痢止めで一時的に改善されます。

 

無理に食事をとらないのも手

下痢の時、おなかを壊したと思った時は、無理に食事をとらないという手もあります。

消化吸収においてトラブルが起きているため、その元となる食品をとってしまうと、治りは遅くなり、余計につらい思いをすることになります。

ですので、お水とかOS-1で水分補給だけして、少しの間様子を見るのも効果的です。食事をとらずにしばらく過ごすことで、自然と腸内の環境が整って行きます。

万が一食事をとらず、水しか飲んでいないのに下痢がたくさん出るとか、同時に吐き気、発熱もある時は危険ですので、すぐに病院に行ってください。

 

市販の下痢止めを使わない方が良い場合

市販の下痢止めを使わない方が良いケースもあります。

次回詳しくお話しますが、ノロウイルスや食中毒による下痢は、ウイルスを体外に出すための働きなので、下痢止めを使わずに出し切る事が必要です。

もし通常の下痢止めを飲んでしまうと、体内にノロウイルスをとどめることになり、嘔吐や発熱もその分長引いてしまい、体に大きな負担となります。

ただ、反対にウイルスによるものでなければ、下痢止めを飲んで止めてしまっても問題ありません。

下痢が続くと水分が多大に失われてしまうので、それを止めて何とか便の水分を再吸収するために、一時的にとどめておいて、環境を整えてから排出する、という事は充分有効です。

 

下痢止めと整腸剤

下痢止めのお薬のほとんどは、腸の異常な動きを止めるという働きによって下痢を止めます。例えば昔からあって有名な、正露丸はこの働きがあります。

ただ、明らかにストレスによる過敏性腸症候群とわかっていれば、ストッパを使う、という風に使い分けるのもおすすめです。

下痢止めともう一つ、病院で処方されるお薬に、整腸剤というものがあります。

病院でしばしば、下痢止めという形で整腸剤を処方されるものがありますが、これはまさに文字通り、腸を整えるお薬になります。

腸内には悪玉菌と善玉菌が存在し、そこにウイルスが入ってバランスを崩し、下痢や便秘といったトラブルを起こしていきます。

整腸剤は腸の中で働く善玉菌をたくさん詰めた薬で、腸を整えていきますので、下痢だけではなく、便秘にも効きます。

しかし言い換えると、整腸剤は腸内環境を整えるためだけのお薬ですので、効くまでに非常に時間がかかるという欠点があります。

病院では抗菌薬と同時に整腸剤を処方されることがあります。

抗菌薬で腸内の善玉菌悪玉菌を一通り殺菌しつつ、整腸剤によって善玉菌を送り込んで、薬の力で腸内をきれいにする、という仕組みがあります。

なので、病院から処方される整腸剤は、抗菌薬に負けない特殊な善玉菌で、一般的な乳酸菌やビオフェルミンとは違う強いものになります。

もし処方された場合はセットで使うようにしてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属