covid-19ワクチンの状況はどうなってるの?#447

Voicy更新しましたっ!

今回は久々にcovid-19で、9月現在のワクチンについてのお話

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2020年9月現在の、ワクチンの見通し

現在、covid-19は一時期に比べると大幅に落ち着いており、重症者数でも確実に減ってきています。

治療の仕方、お薬の使い方もある程度決まり、収束の兆しが見えて来ていますが、軽症者数は少ないわけではなく、依然として新しい生活様式、感染症対策はこれからも必要になります。

今回はcovid-19のワクチンについて、現在の情報をひとまとめにして、お伝えしていきたいと思います。

 

ロシアで世界初の「承認」がされる

まず大きなニュースが、ロシアで世界で初めて、covid-19のワクチンが「承認」されたという事です。ロシア政府が正式に、covid-19のワクチンとして認可したのです。

18歳から60歳の方、38人に接種して、3週間後にもう一度接種、そして6週間様子を見たところ、38人全員に、3週間以内に抗体が確認され、さらに大きな目立った副作用も出なかった、という事です。

小さい、頭痛や関節痛と言った副作用はあったようですが、これはインフルエンザなどのワクチンでも見られる範囲のもので、特に問題ないだろう、ということで認可されました。

これが一番凄いのは、わずか「38人」の、9週間程度の実験で政府が承認したことです。

以前少し触れましたが、通常の臨床試験というものは、第一層、二層、三層と、3段階を経て、そのデータを充分に踏まえて承認されますが、今回の実験だけでは、第一層、二層の段階で、三層の部分をせずに承認したことになります。

ロシア政府はこのワクチンを承認をしつつ、第三層の試験をするという方針で、これから4万人を対象に試験をする予定になっています。

ワクチン、お薬において無視できない「安全性」は、これから確認するというのは、ロシアならではだと思います。

 

他国の状況

その他の国の状況は、以前の大きなニュースとしてお伝えしたイギリスのアストラゼネカ社のワクチンで、日本も含めて最後の第三層試験の最中にありましたが、神経障害という重大な副作用が確認されたため、現在は試験を中断して再度研究しています。

これはあくまでも中断で、このワクチンが完全にダメになったということではありません。

新しいワクチン、お薬の開発において、一番範囲が広がる第三層試験で重大な副作用が見つかることは珍しくなく、この副作用について研究が開始されます。

どういうもので、何が原因か、どういう方で起こるのかなどを検証して、クリアできれば再度臨床試験を再開します。

実際、この副作用が発見されたアストラゼネカ社のワクチンも、来週には臨床試験が再開されることが決まっています。

全世界で、どこが最初に有効なワクチンを作るかのレースにもなりかけてる今、こうした副作用の事実をきちんと公開して、一旦中断して検証をするという正しい流れに沿って行われているのは、安心できてとても良いことだと思います。

その他では、アメリカのファイザー社とモデルナ社の2社、ドイツではビヨンテック社、中国ではカンシノ社、シノバック社、シノファーム社の3社がワクチンを開発しており、いずれも第三層試験の最中です。

日本ではアンジェス社が第二層の試験中で、ついに国内でも第三層の試験が始まるところにあります。

 

国内のワクチンの状況

さて、これを踏まえて、実際にいつワクチンが供給されるのか、どうなるのかですが、まず政府の方針としては来年前半までに、全国民分のワクチンの確保を目指している、と報道されています。

これはすでに4社の製薬会社と契約しており、回数で言うと5.3億回のワクチンを確保しているということになっています。

これは全国民分と言っても、かなり多い数字ですが、実は1回打てば抗体が出来る、ということはまだわからないのです。

一人1回打って、しばらく予防が出来るのであれば1回ですが、しばらく時間を空けて2回打つ、3回打つ、ということはまだ分かっていません。

さらに、4社合計で5.3億回分で、万が一どこかの会社で重大な副作用が発覚して、1社がワクチン開発から完全に撤退して、使えなくなるという事態になる可能性もあります。

その時に、残りの3社分での契約で確保できるように、あえて多めに確保することを目指しているのです。

 

いつ、ワクチンが行きわたる?

最後に、実のところ、いつになったら一般の国民に、ワクチンが打てるのかですが、これは現段階でも分からず、しばらくは見通しが立ちません。

現在でもほとんどのところで臨床試験中というのもありますが、日本においての承認は通常、臨床試験が終わってからさらに半年か1年ほど必要になります。

今回は急を要することですので、それを短縮する可能性はあり得ますが、新しいワクチンということもあり、また慣例的にこうしたことには凄く慎重になるので、おそらく同じ程度はかかるのかなと思います。

例えば、他の国で承認されて使用されているお薬でも、国内で日本人を対象に、もう一度臨床試験をしないと承認されないようになっているため、現在から考えても相当の時間がかかると思います。

最後に日本製のワクチンですが、先述したように現在は第二層で他国のと比べると一歩後退しているので、承認されるのは早くても来年の半ば頃あたりになるかと思います。

来年前半頃、アストラゼネカ社など海外製のワクチンで、その後、国内の製薬会社のワクチンに切り替わる形になると推測できます。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属