薬剤師初のドラマ!アンサングシンデレラはリアルなの?#449

Voicy更新しましたっ!

今回は現在放送中の薬剤師ドラマのお話

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現役薬剤師から見た「アンサングシンデレラ」

現在フジテレビ系列で放送されている「アンサングシンデレラ」というドラマがあります。

今年初めのクールに放送される予定だったドラマで、covid-19の影響で放送が少し延期され、現在放送されています。

医療ドラマと言えば古くはナースのお仕事や医龍、チームバチスタ、最近ではドクターXがとても人気だったと思います。

また少し前にはコウノドリという、産婦人科、助産師さんが活躍するドラマもありました。

ただ、薬剤師が出てくるドラマ、薬剤師が主役となる作品はありませんでした。

今回はこのアンサングシンデレラについて、自分も2年間ほど病院薬剤師として働いていたため、実際どれぐらいリアルなのかを少しお話したいと思います。

 

薬剤師が作中に出てこなかった理由

まず一番初めに言いたいのが、最初にも少し触れましたが、医療ドラマはたくさんありますが、そのいずれにも、薬剤師という存在が出てこなかった、という事があります。

これは以前から度々触れていますが、「薬剤師は薬を出すのが仕事」という思い込みで、それ以外に出来る仕事がほとんど知られていない、と思われます。

そこにスポットを当てたのが、アンサングシンデレラという作品です。

薬剤師は目立たないところでたくさん関わっていて、例えば何度か登場してきている疑義照会も、病院でももちろん行います。

お医者さんに直接聞くことも当然ありますが、ドラマ内では休憩中のお医者さんがいる食堂まで行って聞きに行ったシーンがありますが、場合によってはそうなることもあります。

そしてそのシーンの時、お医者さんから少し邪険に扱われて、若干対立するような感じのやり取りがありましたが、あのようなやり取りは多かれ少なかれ、薬剤師は経験しているはずです。

特に、二昔前ぐらいの時代では、言ってしまえば普通のやり取り、と言えるぐらいです。

近年重視されている「チーム医療」という意識があり、現在はこれを医学部でしっかりと習っている人が実際にお医者さんとなっているので、そこまで横柄に、邪険にされることは無いと思います。

ただ、この疑義照会はやはり、お医者さんにとっては非常に面倒なことであることは確かです。

 

作中のあのシーンは正しい?

疑義照会の話だとまだまだ長くなるので次に行きますが、この作品では病院内でお薬を扱う、病院薬剤師と言うタイプで、自分で薬局を持って管理するタイプとは性質が異なります。

そして、作中で患者さんの治療計画で、どういう薬を使うかと言ったことを書いて、直接患者さんに見せる、というシーンがあります。

これは、患者さんに対して治療計画そのものを薬剤師が直接見せることはありませんが、お医者さんと二人で打ち合わせることは、充分あり得ます。

お医者さんから来た処方内容をもとに、話し合いをして提案をしたり、逆にお医者さんの方、薬の設計を依頼されることはあります。

ただし、この時に一晩、DI室(病院内にある医薬品情報室)にこもって様々資料を調べて作る、ということはほぼありません。

現在では文献を調べるのと同時に、ネットでからも調べたり、もし必要であれば製薬会社さんにも問い合わせるので、一人でずっとDI室で探すことは今はほぼありません。

最後にもう一つ、ドラマならではと思われがちなのが、瀬野さんという存在です。

救急専門の薬剤師という設定のキャラクターですが、これもすべての病院ではありませんが、実在します。

 

病院薬剤師が患者さんと関わりすぎ?

このドラマで、石原さとみさんが演じる主人公の葵さんですが、「薬剤師の仕事を逸脱してるぐらい患者さんと関わってる」という事を、おそらくドラマを見ている方のほとんどが思っていると思います。

確かに、過剰な演出でしかありえない、大げさなところもありますが、実は病院の薬剤師であっても、患者さんと多くかかわります。

例えば、入院されている患者さんのベッドの横まで行って、お薬の事を説明するというシーンがありますが、これは1988年から正式に、薬剤師の仕事の一つとして組み入れられていることです。

ドラマならではの演出でやっているというわけではありません。

また、病院薬剤師が別の病院、クリニックやドラッグストアに文句を言いに行くようなシーンがありましたが、これは電話でですが、実際に話して情報共有することはあります。

 

患者さんの家にまで行くの?

さらに、作中では患者さんの家にまで行って、薬の状況を見に行くシーンがありますが、これは病院薬剤師ではなく、薬局薬剤師であれば、たまにあり得ることです。

ドラマのようなことがきっかけではありませんが、きちんと薬を飲めているのか、管理できてるのか心配になった時、患者さんにきちんと了解を取って、家に上がり、お薬の状況を詳しく聞くことがあります。

もし飲めていなかったら、事情をきちんと聞いてお薬を変えて飲めるようにするとか、万が一認知症の患者さんだったりなど、他の事情があればケアマネジャーさんやご家族さんに連絡することもあります。

 

薬の「味」で違いが判る?

最後に、一番あり得なさそうな、過剰すぎる演出のようなシーンが、子供用の粉薬を、目隠しをして、味で違いを判断したという部分です。

メイアクトと言う薬と、クラリスという子供用の薬とを味で見分けて、成功したというシーンですが、このお薬に関しては、おそらく薬剤師であれば全員分かります。

この二つは味も匂いも全く違う、特徴的なお薬で、実際に飲まずとも鼻を近づけただけで、おそらくわかると思います。

このシーンは原作の漫画でも同様のがありますが、その時はメイアクトではなくバナンというお薬と、クラリスというお薬とで見分けるシーンがあり、それだと少し難易度が高くなります。

そして、自分もそうですが、薬剤師はお薬の味を見ることは実際にあります。

特に小児用の、お子さんへ使うお薬は、患者さんに実際に飲む感じを伝える必要があるので、小児用のお薬を取り扱う薬剤師であれば、やっている方もいると思います。

また、大人用であっても、OD錠という口の中で溶ける錠剤のお薬があり、これは製薬会社さんごとに味が大きく違い、特にジェネリック医薬品であれば各社様々な違い、差をつけて発売するので、味にもたくさんの種類があります。

自分の場合は一応、薬局として購入して、取り扱う場合には一通り確認しますが、正直言って覚えられる数ではありません。

ただ、非常にマニアックな、味を確かめるのが好きなような薬剤師であれば、細かく確認して覚えている方もいるかもしれませんが、ドラマのように目隠しして当てるのはおそらく不可能だと思います。

ただし、これに似たシーンで、患者さんのお母さんに対して、患者さんとなる子供さんに使うお薬を味見させるシーンがありましたが、これは現在では行わないと思います。

作中でも少量であれば問題ないということで味見をさせますが、確かにしっかりと認可を受けているお薬ですので、何らかの健康被害が出ることはおそらくありませんが、万が一、何らかのアレルギー反応が出る可能性は、否定できないのです。

そしてそうしたことは実際、つい最近にあって業界でニュースとなりました。

薬学部の実習生の方に、研修の一つとしてドラマのように子供用の薬の味見をしました。

するとその方がアレルギーを起こしてしまい、問題となりました。

 

薬の説明をしっかりとできるように備える

薬剤師が味見をするのはあくまでも仕事の一環として、新しい薬を扱うために、説明できるようにという意味であり、また万が一何かあった場合でもある程度は自力で対処ができるため、行うことです。

なので、一般の方で、単に味が知りたいからと言って味見をするのはあまりおすすめしません。

他には、例えば新しい吸入のお薬が出たときにはその使い方をしっかりと知っておいて、きちんと説明できるようにするために、自分で使う事もあります。

注意点や使い方のコツを説明できるよう、事前に使ってみるのです。

このように、お薬に関するありとあらゆることを、薬剤師は行います。

ドラマは少し過剰な演出の部分もありますが、興味があれば是非、見てみてください。

 

 

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属