同じうつ病でも対処が違う?新型うつ病!#458

Voicy更新しましたっ!

今回も前回に関連して、新型うつ病のお話

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従来のうつ病とは全く違う「新型うつ病」

今回も前回に続いて、ストレス、うつにまつわるお話です。

最近多く確認されている症例で、従来のうつ病のように、医学的に病名として認められているものではありません。

一応、現在の医学界では、従来のうつ病のことを「定型うつ病」、新型うつ病のことを「非定型うつ病」と言う事が多いですが、現代型うつ病、とか、未熟型うつ病、などいくつかの呼び名があります。

今回はひとまず、「新型うつ病」と呼称してお話していきます。

一説には適応障害の症状の一つ、との見方をされることもある、この新型うつ病について、少しご紹介していきます。

 

新型うつ病の症状

新型うつ病は20代から30代の方に多く、一般的なうつ病はどちらかと言うと男性に多い病でしたが、新型うつ病は女性の方の患者さんも多いと言う特徴があります。

生活に支障が出るほど疲れが重く感じて、特に手足が鉛のように重たくなって、動かすことが難しくなるという症状が出てます。

これだけでは従来のうつ病と似ていますが、それと同時にイライラする、どことなく腹立たしい気持ちがあるとか、疲れとは違う辛い感情も同時に強く感じるのが、新型うつ病の特徴です。

従来のうつ病は性格的に、非常に真面目で凄く几帳面なところがあるとか、責任感が著しく強いなど、傾向としてそういう方が多いことが分かっています。

しかし、新型うつ病はそういった特徴が一切無い人どころか、思い通りに行かない時に他のものや他人のせいにするような傾向がある方が、発症することがあります。

なので当然、軽度な場合であれば、普通に見たら単にわがままな、独りよがりな性格なだけとか、なまけてるだけのように見られますが、うつ病と同じように症状が進行していくことも分かっているため、どんどん悪化していきます。

うつ病と同じく、重度になると、自死に至ることも充分あり得ます。

 

うつ病と新型うつ病の違い

うつ病と新型うつ病で、実際に何がどう違うのか、という事ですが、まず症状そのものや発症しやすい方など、まるっきり逆になっている、と考えてください。

例えば、うつ病であれば不眠の症状がありますが、新型うつ病はこの逆で、普段よりも眠りすぎるとか、どれだけしっかり寝られていても眠気が取れないとか、何らかの欲求が著しく強く出る、ということが挙げられます。

これは睡眠欲の例ですが、他には食欲においてでも同じように、普段よりも食べすぎるとか、特に甘いものをたくさん食べたくなる、と言った症状が多いのが、新型うつ病の大きな特徴です。

そしてもう一つ、新型うつ病は夕方から夜にかけて症状が出ることが多いとされています。

例えば日中、職場や学校にいる時は、それまでの普段と同じように活動できるのに、家に帰ってから急に手足が重くなったり、一気に気分が沈む、という流れです。

従来のうつ病、前回の適応障害ではストレスがかかった時にうつ状態になり、家に帰ったりしてストレスが無くなると症状が収まっていく病ですが、新型うつ病はその逆になるという事です。

またこれは適応障害に似ている部分として、好きなことをしている時は、手足のだるさ、疲労感の症状は一時的に収まるため、双極性障害や適応障害と混同されやすい一因になっています。

さらに、新型うつ病にも、抗うつ薬が効かないため、適応障害のように認知行動療法やカウンセリングで治して行くのが主な治療になります。

 

新型うつ病の原因

従来のうつ病、適応障害はいずれもストレスが大きな原因になりますが、新型うつ病は育ってきた環境、幼少期の教育環境、親子関係に依るところがあるとされています。

それに加えて、日常生活のストレスが重くかかることで、発症する、というのが多いです。

3回にわたってお伝えして来たうつ病、適応障害、新型うつ病のいずれも、どういう流れで発症したのか、どういう環境、ストレスが今かかっているのか、そういったことをしっかりと見極めて、判別することが大切です。

できれば、活動できる日中の間に時間を作って、職場にいる産業医さんや、保健室の先生と言った方に相談に行くのがベストです。

いきなり心療内科や精神科のお医者さんに行くのも良いですが、なかなかハードルが高いので、身近なところにいる専門家の方に相談して、そこから紹介してもらうとか、繋いでもらうとスムーズだと思います。

 

従来のうつ病とは違う、新型うつ病への対処

従来のうつ病や適応障害の場合、一番最初に行う対処は「仕事や学校を休む」ことです。

芸能人でも一旦仕事を取りやめて休養する方がいるように、ストレスになる活動から一旦離れる必要があります。

その上で、抗うつ薬をしばらく服用するとか、適応障害であればゆっくりカウンセリングをしながら認知行動療法する、という風にして治療していきます。

また少し有名ですが、従来のうつ病では、その周りの人は患者さん本人に向かって「頑張れよ」とか「元気出せよ」みたいな励ましは厳禁で、優しく寄り添うようにサポートする必要があります。

しかし、新型うつ病の場合はこの逆で、仕事や学校は休ませない方が良いことが分かっています。

基本的には、出来るだけ今まで通りの活動をして、さらに、周りの人からの励ましも多少はあった方が良い効果があり、認めたり褒めてあげたりすると尚良いということも分かっているのです。

ただし言うまでもなく、説教したり怒るのは逆効果ですのでしないようにしてください。

注意するのは、新型うつ病という判断がされてから、そのように対応することです。

普通のうつ病なのに、普段に近い感じで接したりすると重大な逆効果になり、適応障害でもあまり良い効果はありません。

あくまでも、今回の例に当てはまっているような、新型うつ病と判断された方がいた場合の対処として考えてください。

 

前回、前々回にも重ねてになりますが、病態として適応障害や双極性障害など、同じような症状でも治療の仕方、方針が全く違う病がいくつもありますので、きちんとそれぞれで判別しなければ、悪化する危険があります。

もし何か心当たりがあれば、早めに相談していただければと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属