感染対策のエビデンスはあるの?#482

Voicy更新しましたっ!

今回は今一度、現在の情報も踏まえて、感染対策全般についてのまとめ

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現在分かっている、感染対策の効果

今回は現在分かっている、感染対策のエビデンス、効果についてまとめてお伝えしていきます。

おおよそ浸透してきた、マスクや手洗いと言った感染対策ですが、ここで今一度、その根拠と効果についてご紹介いたします。

まずはとにかく、引き続き徹底して、以下にご紹介する感染対策を行ってください。

 

マスクの効果

最初に、不織布のみならず、おしゃれな自作の布マスクやウレタンのマスクなど、世界的にも定着した「マスク」についてです。

これは以前の配信の中でお話したことになりますが、ハムスターで行った実験の話です。

2匹のハムスターを、直接は接触できないように柵のような仕切りを設け、空気だけ共有する形で同じ箱の中に入れました。

片方は感染していない健康な状態で、もう片方のハムスターにはcovid-19を感染させて、観察しました。

この時、2匹ともマスクをしていない状態だと、66.7%の確率で、健康な方に感染しました。

感染していない健康なハムスターだけにマスクをつけた場合、33%の確率で感染しました。

反対に、感染しているハムスターだけにマスクをつけた場合、16.7%の確率で感染しました。

これがマスクの効果のエビデンスです。両方ともにマスクをつけた際のデータも知りたいですが、それは実験されていないようで確認できませんでした。

実は、この実験には続きがあり、感染したハムスターの間で、重症化リスクについて、差があることが分かりました。

最も重症化しやすかったのが、最初の実験の、マスクをしていないでうつされた方の、健康なハムスターだったのです。

そもそも、covid-19に限らず、ウイルスは体の中に入った時のウイルス量が多いと、重症化しやすいという事があります。

人それぞれ基礎疾患や既往歴もあるので一概には言えませんが、単純に同じ一般的な成人を比べた時、体内に入ったウイルスの量が多い方が重症化しやすい、という事です。

covid-19においては、実際に去年の1月、2月ごろは、無症状感染している人が大幅に少ない傾向にありました。

検査の基準が今と違うという点はありますが、当時はマスクが著しく不足していた上に、マスクをつけるという習慣もほとんどありませんでした。

今ではマスク不足が完全に解消され、定着してきたため、体内に入るウイルス量が減り、同時に無症状感染の割合が上がってきた、という考え方ができます。

ただ入ってくるウイルス量が減らせられるのは医療用のサージカルマスク、不織布マスクで、布マスクやウレタンマスクはその効果が落ちることが分かっているので、出来るだけ不織布のマスクをつけるのがベストです。

 

手洗いの効果

次に手洗いについてですが、こちらは感染症学雑誌という本で取り上げられたデータがあります。

これは全く洗っていない手に、ウイルスが100万個ついていると仮定した場合、水だけで15秒、ざっと流した場合はそれが1万個になり、ハンドソープを使って10秒間手全体をくまなくもみ洗いして、15秒水ですすいだ場合は数百まで減る、と発表しています。

そして、ハンドソープで60秒もみ洗いして、15秒水ですすいだ場合は数十個まで、最後にハンドソープで10秒もみ洗いして15秒水ですすぐのを一度に2回繰り返した場合は数個レベルまで減る、としています。

このハンドソープとは、市販のキレイキレイやミューズといった商品と同じ種類のもので、特別に消毒や殺菌作用のあるものではありません。

このデータから、一回で長時間やるよりも短く2回繰り返すのが効果的、と言われています。

 

体内に入るウイルスは、数百個だけでも危険

最初の実験で、15秒ざっと洗うだけで100万個のウイルスが1万個まで減るということから、水だけでも充分効果があるように思われますが、実は体内に数個入っただけでも、感染して重大な事態になるケースがあります。

例えばノロウイルスがその代表例で、食事の前に手を洗ったとしても、それが不十分で万が一体内に入ってしまうと簡単に発症する、という事が起こり得ます。

また、体質的に、アルコールがお肌につくと荒れてしまって使えないという場合には、ハンドソープや石鹸での手洗いを充分徹底するようにしてください。

 

アルコールでの消毒について

手洗いに関連してアルコールについてですが、手を洗った後、アルコールを使うことで完全に消毒が出来ます。

この時重要なのが、完全に水気を切って、それからアルコールを付けるという事です。

手を洗った水分がついたままだと、アルコールが薄まって効果が大きく弱まりますので、必ず充分に水気を拭きとって、それから付けてください。

アルコールに関連してもう一つ、最近はかなりの割合で、様々なお店の出入り口に消毒用アルコールが設置されていると思いますが、一般的なポンプ式のアルコールは、しっかりとワンプッシュ押し切って使ってください。

手に余るほど、かなりの量が出てくると思いますが、それで両手の甲、手首近辺まで含めてすり込ませることで、100%の消毒効果になりますので、使う場合は必ず押し切るようにしましょう。

 

ソーシャルディスタンス・換気の根拠

最後に、covid-19で世界中で言われるようになった「ソーシャルディスタンス」「換気」についてです。

まずソーシャルディスタンスについて、「咳マシーン」という、人工的に人間の咳の風圧、飛沫を飛ばす装置で行った実験があります。

咳マシーンの先にマネキンを置いて、飛沫を計測したというもので、これではマシーンとマネキンが60cm離れている時が最も飛沫が付いたとされています。

90cmでその3分の1程度の量、120cm以降でほぼゼロになりました。

これが最低1メートル以上距離を開ける、というソーシャルディスタンスの根拠になります。

次に換気についてですが、これは以前何度かお話した、エアロゾルという、通常の飛沫よりもさらに小さい、ウイルスを含んだ飛沫が空気中に漂ってしまい、ウイルスを運ぶことが分かっています。

これが分かったのはあるICUで、床だけではなくパソコンのマウス、室内にあったゴミ箱、廊下の手すりと言ったところにまでウイルスが付いていることが分かり、さらに空気中でも患者さんの位置から4メートル離れたところからも検出されという事が分かっています。

ただし、あくまでも検出されたというだけで、実際にそうして広がったところから感染するのか、そのわずかな量のウイルスに感染力があるのかは不明ですが、covid-19のウイルスが広がりやすいのは確実です。

一方、シンガポールにある病院で、感染隔離病室という感染症に特化した病室の空気中のエアロゾルを計測したところ、室内に患者さんがいても検出されなかった、という発表があります。

この理由は、その隔離室が1時間に12回、空気が入れ替わる設定で換気されているためです。つまり5分に1回は完全に室内の空気が入れ替わっている、ということになります。

通常の生活環境であれば、5分に1回ものこまめな換気は不要ですが、換気扇を回すとか、1日の間でドア、窓を少しだけ開ける、という風に意識して、空気を入れ変えるようにしましょう。

 

これからも引き続き、これらの感染対策を徹底していってください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属