輸入と製造!日本製ワクチンが遅い本当の理由は?#493

Voicy更新しましたっ!

今回も前回に続いてワクチンのお話で、気になる確保量や「国産化」について

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確保の遅れが深刻に

今回も前回に続いてワクチンのお話です。

現状、日本に入ってくるワクチンの数量が、これまでの予定よりも少ないことが明らかになってきています。

3月に入ってくるワクチンは、約45万バイアル(ワクチンが入った容器)の見込みで、これは当初の予定よりも大幅に少なく、4月以降から徐々に増えるとされています。

これには、ワクチン製造国となるフランス、EUでの輸出の問題、そして発展途上国へのワクチン供給、そして少しニュースにもなった注射器の問題があります。

EUで生産され、投資もしてきたファイザービヨンテック社のワクチンがEU域内ではなく、日本をはじめとした諸外国に流れることに待ったがかかった形で、次が途上国用のワクチンの製造や流通が滞り、日本にも影響が出ているという現状です。

そして最後が、日本の注射器と接種希望の問題です。

 

特殊な注射器が必要&接種希望者が大幅に増加

ファイザー/ビヨンテック社のワクチンは、特殊な注射器を使うことで、一つのバイアルから6回分打てますが、現在国内で流通している通常の注射器では、5回しか打てない、という問題が浮上しました。

現在、その6回分打てる注射器を生産中ですが、これが高齢者の接種の段階に間に合うのがベストですが、その見通しは立っていません。

これはつまり、3月の45万バイアルで考えると、1バイアルで6回打てた場合では、266万回分のところが、222万回にまで落ちるということになります。

そしてもう一つが、医療者の先行接種希望者が予定よりも100万人増え、370万人の接種予定になりました。

2回接種することを考えたら、単純計算で700万回強分のワクチンが必要で、3月分に入ってくる分では完全に足りないという状況になり、必然的に高齢者の接種もずれ込んで来ます。

 

ワクチンの国産化

そして気になる、日本製ワクチンについてですが、現在第3層の臨床試験の中盤あたりにあります。

臨床試験が終了するのは早ければ来年度中で、生産流通も早くても来年の夏以降になる見通しです。

日本の臨床試験は単純に手続きが多い上に煩雑な部分もありますが、現在の日本の感染者数は諸外国と比べると極めて少ないため、ワクチンが効いたことで感染をしていないのかどうかが分かりにくい点があります。

感染が抑えられているという事は、ワクチンのはっきりとした効果が見えにくいという事に繋がるのです。

さらに、これは海外製のワクチンでも同じ手続きでされており、特例承認となったコミナティ筋注も、一応は日本で臨床試験がされた上で承認されており、今後流通されていくアストラゼネカ社製、モデルナ社製、どちらも同じ手続きを経て流通されます。

日本製のワクチンは、そうした物の後に出てきますので、時間は非常にかかると思われます。

 

日本のワクチン研究が遅れている原因

手続きに時間がかかるとか、安全性の確認が必要だとしても、日本のワクチン研究はかなり遅れているのでは、と思われそうですが、実はそれには理由があります。

日本でも1980年代までは、ワクチンの開発研究は盛んでした。

当時は学校での集団予防接種が義務付けられていた時代ですが、そのとき、ワクチンの副反応による訴訟が相次いで発生しました。

当時のワクチンと言えば水疱瘡や麻疹風疹、インフルエンザ、日本脳炎がありますが、学校に通う生徒全員に、義務として接種していたため、副反応はどこかで必ず起きていたのです。

その訴訟に加えて、マスコミの報道も過熱化し、ワクチンに対する不信感、反感が世間に凄く漂っていました。

その後、1994年に学校での集団予防接種の制度が無くなり、義務から勧奨になり、家庭それぞれで個別に接種するようにとなったのです。

必然的に、ワクチンを打つ方が減ることとなり、絶対数が減る事で製造数も落ち、採算が取れなくなって、日本でのワクチン開発が衰退していったのです。

 

個人の感染・社会的な感染を防ぐのがワクチン

以前から度々お伝えしている、ワクチンは出来るだけ打った方が良い、と言うお話に通じますが、ワクチンは個人の感染を抑えるのと同時に、パンデミックを抑えるのに絶大な効果があります。

しかし一方で、万が一、10万分の1や100万分の1レベルの確率で起こる、重大な副反応に実際に見舞われた場合、その本人にとってはとてつもない程の大ごとです。

そう考えると難しい問題ですが、今では訴訟を起こさずとも、副反応が起きたときの保障制度が整っており、救済措置も充分あります。

ワクチンに対する認識を、covid-19で深刻な事態になった今、考え直してみるのも大切だと思います。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属