錠剤の中身はほとんど薬じゃないの?#503

Voicy更新しましたっ今回も普段と趣向を変えて、お薬の中身のお話

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錠剤の中には、何が入っている?

今回もcovid-19や季節の事とは全く変わって、錠剤のお薬についてのお話です。

先日、医療関係ではない知り合いと少し話したとき「お薬は症状に効果がある成分だけが入っているわけではない」と言うお話になりました。

この話をしたら「そうなんだ!」と凄い驚かれたので、今回はこの「お薬の中身」というものについて、今一度ご紹介していきたいと思います。

 

症状に効果のある成分は、全体の数%

錠剤の中に入っている成分のうち、目的となる症状に効果のある成分は、ほとんどのものでは、わずか数%しか入っていません。

種類によっては50%のものもありますが、1%から5%程度しかないものも多いのです。

例えばお薬の名前+○○mgと書いてあることがあります。

アムロジピン10mgとしたら、お薬の効果がある成分が10mg入っている、となりますが、1錠の重さで言うと、もっとあります。

それ以外の重さは何で出来ているかというと「かさ増し」の成分です。正式名で「賦形剤(ふけいざい)」と言います。

賦形剤が無い、という事は、お薬の効果のあるものだけを取り入れるという事になります。

つまりこのお薬の例だと、10mgだけ飲むことになります。

10mgだけ錠剤にするのはそもそも難しく、袋や紙に入れれば、静電気などで中に残ってしまい10mg全部摂取することが出来ない可能性も生まれます。

そこで形を整えて取り扱いやすくしたり、飲みやすくするために、賦形剤を使います。

そしてもう一つ、「崩壊剤(ほうかいざい)」という、水を吸うことで錠剤が溶けるようにするものを入れる場合もあります。

 

お薬以外の成分となる「添加物」

錠剤のお薬は、そのままだと体には吸収されず、水分に溶けるようにしなければなりません。そこで崩壊剤というものを使って、基本的にはおよそ10分ほどで溶けるようにできています。

そして、錠剤は全て「粉」で出来ておりますので、粉同士が結合するように、結合剤というものも入っています。

最後に「滑沢剤(かったくざい)」を使って、表面を滑らかに、光沢のある形にして、一般的な錠剤に整形します。

前項の賦形剤から、これらのようなお薬以外の成分のことを総称して「添加物」と言います。

 

他にも様々な工夫が

薬の成分と添加物を混ぜ、固めて完成と思われそうですが、このほかにも様々工夫がされています。

まず「糖衣錠」というタイプがあります。特に「正露丸糖衣A」と言い、正露丸で非常に有名だと思います。

文字通り、乳糖という糖の一つを錠剤の周囲にコーティングしたもので、苦みが強いお薬を糖衣錠にすることで飲みやすく出来ます。

また、口の中で溶ける、口腔内崩壊錠というものもあります。

通常、錠剤は水とともに飲みますが、お年寄りの方などは、水と一緒に錠剤を飲むとむせてしまい、誤嚥する危険があります。そこで、口の中の水分だけで溶けて飲み込めるというお薬です。

ただ、口の中で溶けるため薬の味が非常に強く出るので、薬剤師が味見をすることがたまにあります。

ちなみに味見をするだけで飲み込まないように、すぐに吐き出すので、一応は安全ですが、一般の人はむやみに薬を飲むことはしないでください。

前項の、口腔内崩壊錠に似ていますが、口の中でかみ砕くという、チュアブル錠というタイプのお薬もあります。お菓子のラムネのような形で、お子さんのお薬でたまにあります。

さらに、成分によっては体内ですぐに溶けてしまい、何度も細かく飲まなければならないものがありますが、それをゆっくりと溶けて効くように設計されているお薬を、「徐放錠(じょほうじょう)」と言います。

体内でゆっくりと溶けて効くように、時間を計算して調節されているため、従来であれば1日3回飲む必要があったものを、1日1回で事足りるようにした、というお薬もあります。

最後に、薬を飲んで胃に行ったとき、胃酸で溶けて薬の成分が無くならないようにコーティングしたものが、腸溶性コーティング錠です。

胃酸で溶けずに、文字通り、腸で溶けるように、特殊なフィルムでコーティングしたお薬です。

 

お薬を飲むときに気を付ける事

以上、いくつかお薬の工夫をご紹介していきました。

最後に、お薬を飲むときに気を付けたいことですが、まずお水の量はコップ一杯程度の量にしてください。

前述の口腔内崩壊錠のような特殊なものは例外ですが、一般的な錠剤は充分な水が無いと飲み込めず、溶けないため、喉にくっつく可能性があります。

喉についてしまうと薬の効果が得られないどころか、その部分で炎症が起きてしまうので、出来るだけコップ一杯程度のお水とともに飲んでください。

ちなみに、基本的にはお薬は、お茶やジュースで飲んでも問題ないことが多いですが、一部のお薬ではグレープフルーツのような、柑橘系のジュースとともに飲むと効果が変わったり、オレンジジュースと飲むともの凄く苦くなる薬もありますので注意してください。。

ただし、お酒と一緒に薬を飲むことは絶対しないでください。もともとお酒は肝臓を急激に働かせるものなうえに、お薬自体が肝臓に負担になるため、薬の効果に大きく影響が出てしまいます。

次に、これもチュアブル錠のような元々噛んで飲むお薬は例外ですが、基本的には錠剤は噛まないで飲み込んでください。

前述のように、胃ではなく腸で溶けるようにコーティングされてあるお薬や、ゆっくり溶けていくように作ってるお薬など、緻密に計算されて作られているものがほとんどですので、最初から噛んでしまうと、そういった効果が得られないとか、場合によってはお薬の効き目が出すぎてしまい逆に危険な場合も中にはあります。

必ず、お医者さんや薬剤師から受けた指示通りに飲んでください。

そして、水以外で飲む場合でも、安全のため薬剤師に聞いてみるのがベストですので、何となく水以外でのんでみたいときには出来るだけ相談してみてください。

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属