イベルメクチンはCOVID-19の治療薬になるの?#537

Voicy更新しましたっ!

今回はcovid-19治療薬のダークホース的存在、イベルメクチンというお薬の最新情報について

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イベルメクチンの話題が急増

デルタ株への置き換わりが猛スピードで進み、依然として世界的に流行しているcovid-19ですが、以前わずかに取り上げた「イベルメクチン」というお薬の話題がここ最近で非常に増えて来ています。

今回はこのイベルメクチンについて、最新情報も踏まえながら詳しくお伝えしていきたいと思います。

以前、527回で簡単にですが取り上げておりますので、そちらも併せてご覧いただければ幸いです。

 

ウイルスに対して効果のあるお薬

イベルメクチンとは、元は「ストロメクトール」という商品名で販売されているお薬です。

ヒゼンダニやフィラリアといった寄生虫類を殺す作用がありますが、HIVやインフルエンザ、デング熱のウイルスにも効果があるお薬です。

具体的には、種類を問わず、ウイルスというものが体の細胞に入らないようにしてくれる、という仕組みです。

前回の配信のように言えば、人間の細胞に入らないということはコピーを作れないため、体内で増えないということです。

肺炎ウイルスの一つとなるcovid-19にも効くのでは、ということで実験がされており、一部では実際に軽症の方へ処方までもされています。

しかし、WHOなどは効果が不確実で安全性が保証されていないため、使用すべきでないという声明を出しています。

効果が確実でない上に、何らかの重大な副作用が起き、薬害事件となる可能性もあるため、WHOなど公式にはまだ認められていません。

現在日本では北里大学が治験を精力的に進めていますが、ワクチンではなく治療薬となるため、時間は非常にかかっています。

 

効果のエビデンスが無い現状

そして以前も触れましたが、このイベルメクチンが実際に効果がある証明、エビデンスも未だに乏しいのが現状です。

ただ、治験と呼べるほどの規模ではないものの、国外でも使用されており、「効果があった」という報告はいくつかあります。

例えばアメリカのユタ州では、イベルメクチンを投与していない場合は死亡率が8.5%だったのが、投与した場合1.4%と、およそ5分の1程度死亡率を減らすデータがありました。

そして、重めの中等症から重症にかかる程度の症状の患者さんで、イベルメクチンを投与しない場合は21.3%、イベルメクチンを投与した場合は死亡率が7.3%と違いがあるというデータがあります。

ここまで死亡率が変わったという報告は、現在covid-19治療薬の主力として用いられているアビガン、レムデシビルのどちらでも出ていません。

これはあくまでも、治験として正確にとったデータではないため、100%信頼できるものではありません。

もう一つ、実用化という点では、メキシコ、ペルー、ブラジルの一部の地域では、イベルメクチンを予防的に各家庭に配布したということがあります。

そして配布地域のみ、配布から10日以内の感染者数と死亡者数が減少したというデータもあります。

併せて、感染後1週間以内に服用した場合は76%の改善効果、中等症以降では46%の効果、死亡率は70%低減とも出ています。

他には発展途上国を中心にですが、80件以上の小規模な臨床試験の中で効果があったという報告がされています。

臨床試験は日本はもちろん欧米諸国でもされていますが、政府機関が公的に効果を認めているところは、現状では一つもありません。

 

イベルメクチンの実用化

以前もたびたび、「薬害」について触れていますが、安全性が確認されない限りは実用化はできません。

異常事態のさなかで、需要が極めて高いことはわかりますが、万が一大きな薬害となってしまうとそれこそ取り返しのつかない事態となり、今以上に深刻な状況になる可能性も持っています。

そのために、安全性の確認が必要なのですが、このイベルメクチンに限って言うと、最初に述べたように、すでに世界中で実用化されていて、販売されているお薬になります。

つまり、covid-19用に開発された新薬ではなく、人体への安全性はすでに確認済みの既存のお薬なのです。

これは、covid-19によって事実上世界で初めて、大多数に向けて実用化された、ファイザー社モデルナ社のメッセンジャーRNAワクチンとは決定的に異なる部分です。

当然、イベルメクチンの副作用も充分把握できており、全体の6%ほどの方に気持ち悪さや、軽い嘔吐があります。

そのほかの重大な副作用はごくまれで、ほかのお薬と同程度のレベルということが分かっています。

個人的に薬剤師の立場では、人体への安全性という点ではイベルメクチンはクリアしていると考えても差し支えないと思います。

ただし、covid-19に対してどれだけ有効性が確認できるか、イベルメクチンがどのようにcovid-19に影響しているのかといった、正確なデータやエビデンスが無いと、本格的な実用化は難しいこともわかります。

もし、効果があるときちんと認められて、広く処方されれば、感染がぐっと落ち着いて医療のひっ迫も充分抑えられるはずです。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属