盲腸ってホントは必要?盲腸と大腸の病気!#560

Voicy更新しましたっ!

今回は前回省いた、大腸の最初にある「盲腸」のお話

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小腸と大腸の「つなぎ目」の腸

さて、前回、前々回とそれぞれ大腸小腸についてお話ししました。

今回は、前回省いた「盲腸」についてと、大腸の病について詳しく触れて行きます。

盲腸は、大腸の最初の部分で、小腸と大腸の「つなぎ目」になる部分です。

盲腸は体にとって不要なものなので取り除く、ということがしばしばありますが、実は近年、意外にも重要な役割を持つことが分かってきている部分でもあります。

盲腸の働き

盲腸はおよそ、3センチから長くても7センチほどの長さの部分で、そこから結腸へとつながります。

盲腸はもともと、食物繊維の回でも登場した「セルロース」を消化するための器官として使われていました。

これは現在でも、草食動物は盲腸の器官が極めて長く、逆に肉食動物は植物性の食物繊維を消化する必要があまりないため、盲腸が退化し短くなっています。

人間も同様に盲腸が退化しており、セルロースは消化できずそのまま便となるため、盲腸はあっても無くても良い器官、という見方がされていました。

しかし最近になって、盲腸は大腸の免疫力にかかわる重要な場所という見方がされています。

盲腸には「虫垂」という場所があります。

虫垂にあるリンパ節は免疫にかかわっていて、この部分で腸内を病原菌から守る「IgA」という物質が作られていることが分かったのです。

さらに同時に、虫垂は善玉菌を守るシェルター的な役割を持っていることもわかりました。

例えば、風邪などでたまに処方される抗菌薬、抗生物質では、大腸や小腸に居るありとあらゆる菌を殺してしまいますが、その時に虫垂の中に善玉菌が避難する、という働きをしていることが分かったのです。

しかし、この虫垂が炎症を起こしてしまうことが、割と頻繁に起きます。

これを「虫垂炎」と言います。

盲腸で起こる病気

盲腸で起こる病気の代表例が虫垂炎であり、このことが俗に「盲腸」と言われています。

文字通り虫垂に炎症が起きるというものですが、その原因は未だにはっきりしていません。

例えばストレスや暴飲暴食などで不健康な生活になることで、腸内細菌のバランスが崩れ、虫垂のリンパ節に炎症が起こる、と言われています。

炎症が起こることで虫垂が腫れますが、虫垂は腸の一部分ですので袋状になっており、炎症が進行することでそのまま破れる、ということがあります。

いわば腸が破れたような状態になり、腸内にある悪玉菌や雑菌類が体内に広がることになります。

すると、体内の各地で炎症が起きる「腹膜炎」という状態になり、命にかかわるほど重大な事態になります。

この腹膜炎を防ぐために、盲腸を手術で取り除くということがしばしば行われていました。

言い換えれば、虫垂炎にならないように、あらかじめ虫垂を手術して取り除いておくということです。

今では虫垂炎が起きても軽い状態であれば、お医者さんの指示のもとで抗菌薬を使えば炎症は治まっていくため、昔ほど手術が行われることは無くなってきています。

虫垂を取り除いた後は3年半ほどは大腸がんのリスクが高いということが分かっており、取る前と比べて2倍ほど上がるとされています。

そのため今では、虫垂炎を起こしてもできるだけ取り除かないで治療する形がとられており、万一切除した際には3年ほどは大腸がんに注意すべき、とされています。

ですので例えば、手術後3年間は、年に1回大腸内視鏡を人間ドックのメニューの一つに取り入れて検査するなどで対策していきましょう。

その他の大腸で起こる病気

その他で、大腸で起こる病気は「大腸ポリープ」が有名です。

潰瘍性大腸炎大腸の粘膜で炎症が起きるというものですが、同じように小腸の粘膜で炎症が起きた場合は「クローン病」という病名になります。

大腸ポリープは有名ですが、このポリープがたくさんできると「大腸ポリポーシス」という名前になり、悪化すると大腸がんとなることがあります。

ちなみに潰瘍性大腸炎は近年、虫垂を切除することで改善されたという報告もありますが、虫垂を切ったら潰瘍性大腸炎は起きない、とは言えないようで、この辺はまだ研究の途中にあります。

大腸がんは進行が早いため、早期発見が大切

大腸の病気の予防ですが、特に大腸がんは進行が速い部類で、早期発見が極めて重要なタイプになります。

さらに年齢も40代ほどでリスクが上がるため、40代になると健康診断に便潜血検査が行われ、いわゆる血便があるかを確認するようになります。

便に血が混じるのは痔や胃潰瘍などでも起こるため、一概にがんとは言えませんが、わずかでもがんのリスクがあることは確かですので、便潜血が陽性となった際にはきちんと大腸内視鏡をすることをおすすめします。

ちなみにご存知の方もいるかもしれませんが、便潜血は二回法と言い、2日間に分けて便をとります。

このうち1回だけが陽性で、もう片方は問題なかったということがたまにありますが、もし1回でも陽性になった場合は、前述と同じように大腸がんのリスクがある現れですので、内視鏡で調べた方が安全です。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属