ドバイから帰国した人がかかった麻疹って何?#572

Voicy更新しましたっ!

今回は、海外からの帰国者が「麻疹」にかかったというニュースについて

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「麻疹」の感染者が確認

先日、ツイッターやネットニュースで「ドバイからの帰国者が麻疹に感染」というものを見かけました。

12月2日にドバイから帰国され、3日に高熱、7日に激しいじんましんが出て、麻疹と診断されたという内容です。

「麻疹」「はしか」は、covid-19に関連して度々「covid-19よりも感染力が強い」とお伝えしてきました。

しかし、現在の分類上では「5類指定感染症」となっています。

今回はこのニュースをもとに、covid-19と絡めながら麻疹について触れていきたいと思います。

麻疹そのものの詳しい内容については、だいぶ前の210回で触れておりますので、そちらも参考にしていただければ幸いです。

麻疹の感染力はcovid-19よりも強い

麻疹の症状は、初期は風邪のような症状から始まり、数日で高熱や激しい腹痛、強いじんましんと言った症状が出ます。

これに加えて、麻疹のウイルスは免疫細胞そのものを攻撃するという働きがあります。

つまり、免疫細胞をピンポイントで攻撃するため、普段はかからないような軽い細菌やウイルスにも簡単に負けてしまうようになり、肺炎などにかかる可能性が大幅に高まるのです。

それらに感染したら当然、前述の麻疹の症状と共にそれらの症状も出ますので、非常に厄介なのです。

その上、最初に書いたように感染力が極めて強いのが特徴で、covid-19のデルタ株では一人の感染者から5人程度にうつすことが分かっていますが、麻疹は一人から12人から14人にうつることが分かっています。

麻疹の感染力の強さは、麻疹が空気感染することに起因しています。

covid-19はエアロゾル感染と言い、空気感染の一歩手前ぐらいの小さな飛沫でも感染力があることが分かっていますが、麻疹はエアロゾル感染よりもさらに小さい飛沫で、空気中を漂えるほどの小ささでも感染力があるため、マスクをしていても充分な予防にならないのです。

麻疹では現代の先進国でも、1000人に一人程度は亡くなっていますが、日本では2015年の3月に、WHOから「麻疹排除状態にある」ことが発表されています。

これは、日本国内では流行していないため日本にいる限りでは麻疹にかかることは無い、という意味ですが、流行地域から帰国した人が感染してしまいそこから広がることはあり得るため、今後は注意が必要、ということです。

ワクチンを打つことが最大にして唯一の予防

麻疹にかからないようにするには、予防接種しかありません。逆に言うと、予防接種をしたら完全に防ぐことができます。

麻疹の免疫があれば、二度とかかることはなく、発症することもありません。

1990年2月以降に生まれた方はほぼ全員、予防接種を2回打っているため感染する可能性は極めて低いですが、それ以前に生まれた方は予防接種が一度しか打っていないことがあります。

予防接種は一度では95%の人に免疫ができますが、2回打つことで100%に近いほど免疫ができるため、2回打つことが推奨されています。

ただし、まれに体質的に、予防接種を打っても免疫ができづらいという方もいます。

そういった場合は、海外への渡航や旅行の予定が無いのであれば、心配する必要はあまりありません。

ただ、免疫が無い状態で海外に行くとか、海外の中でも麻疹の流行地域に行く場合は注意が必要です。

ですのでもし海外への渡航予定がある場合は事前に病院で検査をしたり、麻疹の予防接種を受けることを検討して見てください。

風疹麻疹の混合ワクチンというものがあり、自分も予防接種が1回の年代に生まれたため、大人になってから再度打ったという経験があります。

発症した場合は対症療法で治していく

最後に治療についてですが、麻疹には特効薬はありません。

発症した場合は、症状に合わせて対症療法をして、免疫力で治していく他ありません。

頭痛があれば痛み止め、熱があれば解熱剤と言う風に、症状ごとに対処して免疫力でやっつけて行きます。

基本的な免疫力が下がってしまうため、抗菌薬を使って余計な菌やウイルスを寄せ付けないようにするのも治療の一つとして行います。

重ねてになりますが、もし不安でしたら、一度免疫があるか検査をしたり予防接種を受けてみてください。

この記事を書いた人

吉田 聡

吉田 聡

薬局・なくすりーな薬局長
公益社団法人日本薬剤師会、公益社団法人東京都薬剤師会、所属